山田錦は「酒米の王」。心白が大きく溶けやすく吟醸酒に特に適している。全国で広く使われる。
美山錦は東北・長野など寒冷地向け品種。すっきりした淡麗な酒質になりやすい。五百万石は新潟・北陸中心に普及し、端麗な酒との相性がよい。
精米歩合=削った後に残った米の割合。「70%」なら30%を削り、70%が残る。数字が小さいほど多く削っている。
玄米の外側はタンパク質・脂質が多く雑味の原因になる。削ることで中心部(でんぷん)だけを使い、クリアな酒質に近づける。
ただし精米歩合が低い=高品質とは限らない。削りすぎると米の旨みまで失われる。純米酒には精米歩合の規定すらない。杜氏の意図と酒質設計に合わせて選ぶもの。
浸漬した米を蒸してでんぷんをα化(糊化)させる。茹でるのではなく蒸すことで、外硬内軟(そとかたうちやわ)に仕上がり、麹菌が内部に繁殖しやすくなる。蒸米は麹づくり・酒母・もろみのすべてに使われる、工程全体の土台。
甑は少量ずつ蒸す伝統的な道具。外硬内軟に仕上がりやすく麹菌の繁殖に適する。手間がかかるが高級酒・吟醸向き。
連続式蒸米機は大量処理に向き、安定・効率的。普通酒や量産ラインで多用される。
🔗 参考: 甑と連続蒸米機の図解(SAKE Street)
つきはぜは菌糸が米の中心部のみに伸びる。糖化がゆっくりで酵母にストレスがかかり、吟醸香(フルーティな香り)が生まれやすい。吟醸・大吟醸向き。
そうはぜは米全体に菌糸が広がる。糖化が旺盛で甘みと旨みが出やすい。燗酒・旨口の酒向き。
床麹は床全体に広げて管理する大規模向き。箱麹は木箱を使い温度・湿度をきめ細かく管理しやすい。蓋麹は少量ずつ蓋付き容器で管理し、高品質な麹になりやすいが手間がかかる。
酒母では、雑菌を排除し酵母だけを育てるために酸性環境(乳酸)が必要。その乳酸をどう調達するかで仕込み方法が分かれる。
速醸酛は醸造用乳酸を直接添加。約14日で完成。安定・効率的で現代の主流。クリーンな酒質になりやすい。
生酛は自然の乳酸菌を育てる伝統製法。蒸米をすり潰す「山卸し(やまおろし)」という重労働を行う。約28日かかるが、複雑な旨みと酸が生まれる。蔵の個性が出やすい。
山廃酛は生酛から「山卸しを廃した」手法(やまおろしはいし → やまはい)。山卸しを省略しても同様の効果が得られることが大正時代に発見され普及。自然の乳酸菌を活用する点は生酛と同じ。
協会7号は燗映えする穏やかな香り・旨口。協会9号は吟醸香が強くフルーティで現在最も広く使われる。
協会1801号は9号の変異株。カプロン酸エチルが豊富でより華やかな香り。大吟醸向き。酵母の選択で香りの方向性がほぼ決まる。
麹による「糖化」と酵母による「アルコール発酵」が同一タンク内で同時に起こる。これにより高いアルコール濃度(17〜20%)が実現。世界的に稀な醸造技術。
酒母に麹・蒸米・水を3回に分けて投入する主発酵の方法。初添→(1日休み=踊り)→仲添→留添の順。一度に大量投入せず段階的に加えることで酵母を安定させ、もろみ全体を均一に発酵させる。
発酵を長く続けると辛口・端麗に。早めに止めると甘みが残りやすい。低温でゆっくり発酵させると吟醸香が出やすい。
添加する場合は香りの引き出し・雑味の軽減・上槽のしやすさが目的。「薄める」ためではない。
純米系は米と水だけで醸す。重厚で米の旨みが前面に出やすい。
普通酒でコストを抑えるために使用。特定名称酒(吟醸・純米等)では認められていない。
薮田式は機械式圧搾。効率よく大量処理できる現代の主流。
槽搾りは木製の槽に詰めて自重と重しで搾る伝統的方法。雑味が少なくきれいな酒になる。
袋吊り(雫酒)は袋に入れて吊るし、重力だけで垂れた酒を集める。極少量・最高級品向き。大吟醸の鑑評会出品酒に多い。
※ にごり酒も上槽は必ず行う。目の粗い布で搾ることで粒子を残すが、搾らずに出荷することは酒税法上認められていない。
活性炭で色(黄ばみ)や香りの雑味を取り除く。すっきりした酒質に仕上がる一方、旨みごと削るリスクもある。近年は無濾過を選ぶ蔵も増えている。
温度と時間:60〜65℃(63℃を超えないよう厳密管理)で約10分間の加熱が基本。温度が低すぎると殺菌不十分、高すぎると香りや色が変化する。加熱後は急冷が必須。
2回火入れ(貯蔵前・瓶詰め前)が最も安定。常温流通・長期保存が可能になる。
生酒は火入れなし。搾りたての繊細な香味が残るが要冷蔵で、品質管理が難しい。
搾りたてのもろみは17〜20%。水を加えて15〜17%に調整するのが一般的。原酒は加水しない。度数が高く、米の旨みが濃縮された力強い味わいになる。
ここまでのすべての選択の積み重ねが、その酒の個性になる。米の種類・水質・麹・酵母・製法・温度・時間——どれひとつ欠けても、味は変わる。
清酒は精密な発酵管理で造られる一方、出荷後も生き続ける繊細な液体。衛生管理・遮光・温度管理を怠ると、風味が大きく損なわれる。詳細はPART 1.5参照。
食用米は入手しやすくコストが低い。普通酒や地元産米を活かした個性酒に用いられる。
酒造好適米は心白(でんぷんの塊)が大きく、タンパク質・脂質が少ない。麹菌が繁殖しやすく、雑味の少ないクリアな酒になりやすい。